私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
2、3日で工事が済むから、部屋はすぐに使えるようになると言われた。

高陽さんも、少しずつ荷物を持ち込んで部屋の改装が終わるころ越してくるそうだ。


本当に新婚生活が始まるんだ。

本当に、結婚したんだ。私たち。


最低限の荷物だけなら、弟に車で運んでもらおうかな。

荷物を減らそう。コンパクトにすれば、引っ越しだって一日で済むだろう。


「君は来週中にでも、引っ越してくるといい」

「はい」それは、命令ですか?

早くも、何も言い返せない。言いなりじゃないの。
本当に大丈夫だろうか?

この人と二人きりなんて。


「寝室も床だけ張り替えて、カーテンを取り換える。後で業者のサンプルから選んでおいて」
高陽さんは、次々と指示を出す。

「はい。床の材質は?それから、カーテンは今かかってるものと、同じものの方がいいでしょうか?」業者の人が質問する。

「床の材質は、壁との折り合いがあるから。奈央、君が決めればいい。
分からないことは業者に聞いて。カーテンの柄は、部屋に合っていればそれでいいから。デザインについては、君の方がセンスがよさそうだ。全部君に任せるよ」

「センス?どうして私のことまで知ってるの?」驚いて高陽さんを見る。

「君が仕上げたホームページをいくつか見させてもらった。なかなかセンスがいいと思った」

「見てくださったの?」嬉しさでいっぱいになる。

「もちろん。これから結婚しようっていう女性のことは、なるべく知りたいと思うだろう?
それに、この家は、祖父が最後まで住んでた家だ。祖父はね、君にこの家を残したんだ」
彼は、嬉しそうに壁をポンと叩く。

「おじい様が?」ほとんど会った記憶も、触れられた記憶もない祖父が、どうしてこの私に?

「無関心を装っていたけど、孫に何もしてやれないことを気にしてたんだ。
君のお母さんに啖呵を切ってしまった手前、自分から会いに行くこともできずに、寂しい思いをしてたんだと思う」

「どんなおじい様だったの?」

「君は?あったことがないのか……」

「会ったことはあるけど。言葉もほとんど交わさないままだったわ」
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