私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
「今度来るときに持ってこよう。俺の写真だけじゃ不公平だから、その時は君の写真も見せて」

「ええ、いいわ。お行儀がいい写真ばかりじゃないと思うけど」

「是非みたいな。そういうの。ところで、君は、お腹空かないか?」

「減ってる」

「それなら、出かけるか」

高陽さんとは、自宅まで送ってくれる途中、家の近所のファミレスで食事を済ませた。

彼は、もっと気の利いたところにでもと言ってくれたけれど。
ひっきりなしにかかってくる電話や、これから会社に戻って仕事をすると話している彼に、駐車できる場所を探して、街の中を走り回るのは気の毒だと思った。

食事後も彼は、目頭を押さえて疲れた様子でぐったりしていた。
疲れているのか、あまり話さなかった。

大変だろうな。通常の仕事でも大変なのに、結婚に引っ越しなど余計な仕事が増えている。
疲れてしまうのも当たり前だ。

高陽さんは食事を終えると、うとうとし始めた。

こんなに疲れているのに、自分で運転して帰るなんて、大丈夫かな。

眠くなった理由が、つまらない女だから、眠くなってしまったという理由でなければいいけど。


そんなことどうでもいいわ。

さっきの電話で、仕事が残ってるって言っていた。

祖父が亡くなって、事業の見直しや、これからのことを決める会議も多いらしい。

そうだよね。

一族のカリスマがいなくなったんだもの。

伯父さまと力を合わせて、グループ全体をまとめ上げなければならない。

会議の相手は、日本だけではなく、海外にもいる。

24時間気の休まることはない。

食事をしたら、すぐに部下が待ってるオフィスに戻るって言っていた。

この人は、まだ休むことはできないのだ。

かくんと横に体が揺れた時に、高陽さんが目を覚ました。

彼は、はっと我に返って、申し訳ないと寝ていたことを謝った。

「悪かった。なんてことだ」

「緊張が解けてたのね。疲れてるのよ。気にする事ないわ」

私のセリフを聞いて彼は驚いてる。

「君は、目の前で寝られても、怒ったりしないのか?」

「どうして?疲れてる人に怒っても、逆効果でしょう?」

彼は、そうだねと言って笑った。

そして、何とも言えない顔で私を見た。


「どうかしたの?」

「いいや。何でもない。そうだ、忘れてた。結婚したんだから、君には指輪がいるよね?」

高陽さんが、思い出したように言う。

「結婚指輪のこと?ええ。そうね。出来ればあった方がいいかも」

思っても見なかったから、適当に答えてしまった。

「それなら、適当なのを揃えておこう」

いえ、あの……

適当な物じゃない方がいいのですが。

とは、言い出せなかった。

ちょっと変わってるところがあると思った。

真面目で、一生懸命なのはわかる。

次は、いつ会えるのかなと思ってる。

部屋の工事が済んで、引っ越してから毎日会えるんだからと、自分を慰めているのがおかしかった。

もう、すでに私は高陽さんに毎日会いたいと思ってるんだ。
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