私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

私の顔を見るなり、弟の智也がしみじみと言った。


「結婚は勢いって言うけど。奈央が本当にするとは思わなかったな」

弟とは4つ違い。

両親共に自分勝手な生活をしてきただけに、家族って言えるのは弟と二人っきりだった。

父も母も元気でいるけれど、うちの親は普通とは言えなかった。

海の写真ばっかり撮ってる写真家の母親と、自然を愛する父親。


『今日は天気がいいから、ピクニックに行こう』

天気のいい日に、教室の中で勉強してるなんて。

学校に電話してその通り伝える。先生も苦笑いだった。

小さいときは、親の言う事を真に受けていた。

それが普通だと思ってたから。

幼稚園生の頃まで毎日が、本当に楽しかった。

だんだん大きくなってくると、親の言ってることがおかしいとわかってくる。



『学校だけが学べる場所じゃない』

『行きたい学校なんか、あみだくじで決めろ』とか。

うちの親は、どっちの高校にしようか迷った時に、あみだくじやじゃんけんで決めろっていうのだ。

そんな母に相談しても、おおよそ真面目な答えは返ってこない。

相談事は、弟に聞くもので、親に聞くのは無駄だと思うようになった。


いう事はめちゃくちゃだけど。
そのかわり、子供が決めたことに対しては、なにも文句は言わなかった。

頼りにならないっていう、悩みはあったものの、二人とも私たちに対して威圧的な態度は一切取らなかった。

弟の智也も、『親に何を聞いても、いいんじゃない?っていうだけなんだけど。本当にいいのかな』って心配するくらいだった。

今考えると、ありがたかったのかなと思う。

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