私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

智也の顔を見ていると、あんな親から、よくまともな大人に育ったなとつくづく思う。

弟の智也は、まともに育ったどころか、人並み以上にしっかりしてる。

親の事をあてにできないから、自分たちで全部やれることをやって来た。

親のことを、反面教師にして大きくなったのだ。



相談すると、智也はいつも考えて答えをだしてくれる。こいつは、小さいころから大人のようだった。

昔から彼は、ノートの空いているページに鉛筆で線を引いた。

いつもこのやり方で考えてくれる。

『奈央、ここに二つの学校のいいところと悪いところを書き込むんだ』

私は、智也が小学生だった頃から、彼のことを当てにしていた。

『いいところって何?』中学3年生の私が尋ねる。

『いいところって、制服が可愛いとか、卒業生の進学先とか。家から近いとか。とにかく全部だよ』智也の言う通り、私は思いつくままノートに書きこんだ。


私が書き込んでいるうちに、彼は高校の資料を見て言う。

『智君漢字が読めるんだ』と無邪気に感心していた。

『自分ならこっちかな。進学率が全然違う』
字が読めるだけでない。もっともらしい考えもできる。
親みたいなことを言うなと思った。

『それなら、相当頑張らないと』結局、頑張るんだ。

『奈央、全然勉強してないもんね』弟は、私のことを姉だとは思っていない。

あの頃でさえ、知性ではすでに智也に負けていた。

智也は次の年に中高一貫校に進学して、ストレートで国立大の法学部に合格した。そして弁護士を目指してロースクールに通っている。

そして、姉を姉だと思っていない。

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