私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
「ちょっと待てよ、奈央。部屋中の荷物持っていく気か?」
いつもと変わらず、私の事を姉だと思ってない智也が言う。
「引っ越しなんだから当たり前じゃないの。なによ。」
この2、3日で必死に荷造りしたのに、引っ越し先に持っていくのは、最低限の荷物だけにしたらと言い出した。
「どうして、そんなことするのよ」彼に聞く。
「帰って来られるようにした方がいいんじゃないか?
しばらくは。喧嘩したり、追い出されたりして、帰るところもないんじゃ困るだろう?」
「あんた、そんなことまで考えてるの?」
こいつに、ゲームで戦いを挑んでもどうして勝てないのかよくわかった。
「だって、絶対に胡散臭いだろう」
「胡散臭いって?」
「最初から変だろう。この結婚。あんた、本当に能天気だな」
「ん?」
「考えてみろよ。いろいろ相手なんて選び放題のはずなのに、なんで奈央なんか選ぶの?
たとえ何億円も株券がつてきたって、俺だったら考えるね」
「そうかなぁ。私的には株券が付いてくるってことで、ようやく釣り合いが取れてると思うけど」
「それは、どうかな」
智也が首をかしげて他人ごとみたいに笑う。
ここは、智也の言う通りかもしれない。
戻ることなど考えないで、強い気持ちで向かっていくのもいいけど。
ということで、私は、段ボール箱の半分をまた開ける羽目になった。