私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

「ちょっと待てよ、奈央。部屋中の荷物持っていく気か?」

いつもと変わらず、私の事を姉だと思ってない智也が言う。

「引っ越しなんだから当たり前じゃないの。なによ。」

この2、3日で必死に荷造りしたのに、引っ越し先に持っていくのは、最低限の荷物だけにしたらと言い出した。

「どうして、そんなことするのよ」彼に聞く。

「帰って来られるようにした方がいいんじゃないか?
しばらくは。喧嘩したり、追い出されたりして、帰るところもないんじゃ困るだろう?」

「あんた、そんなことまで考えてるの?」

こいつに、ゲームで戦いを挑んでもどうして勝てないのかよくわかった。

「だって、絶対に胡散臭いだろう」

「胡散臭いって?」

「最初から変だろう。この結婚。あんた、本当に能天気だな」

「ん?」

「考えてみろよ。いろいろ相手なんて選び放題のはずなのに、なんで奈央なんか選ぶの?
たとえ何億円も株券がつてきたって、俺だったら考えるね」

「そうかなぁ。私的には株券が付いてくるってことで、ようやく釣り合いが取れてると思うけど」

「それは、どうかな」

智也が首をかしげて他人ごとみたいに笑う。

ここは、智也の言う通りかもしれない。

戻ることなど考えないで、強い気持ちで向かっていくのもいいけど。


ということで、私は、段ボール箱の半分をまた開ける羽目になった。

< 45 / 173 >

この作品をシェア

pagetop