私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
元から智也の方が慎重で、抜かりない性格だった。

私だって考えてはいるけれど、うまく行ったためしがない。

いつも空回りしてる方だった。

智也がそうした方がいいという時は、素直に従った。その方が確実だ。


段ボール数箱になった私の荷物を車に入れ、新居へ向かった。

普段は散々な使いだが、本当に助けて欲しいという時は、こうして何も言わずに手伝ってくれる。口は悪いが、優しい弟だ。

私は胸が熱くなって、智也のくるんとした髪を手でぐちゃっとやった。

「あっぶねー!ふざけんな、バカ」
怖い顔で睨みつけられた。

こいつの髪の毛、天然パーマかな。

触った感じどっちか分からない。

「おい、頼むから、死にたくなければ、運転中は静かにしてろ」

「はーい」

だんだん新居に近づいてきた。

智也に家の場所を案内する。

車を家の前に止めると、窓から大きな家を眺めた。

「すっげえな。どんだけ敷地あるの?こんな都心の一等地に」
彼がそう言うのも無理はない。

「さあ、どのくらいか分からないけど。部屋はいくつもあるのよ」

「なるほどね。こんなことなら、断る理由なんてないわけだ。結婚してすぐに別れたってこの家もらえば?それにたんまり慰謝料貰えるぞ」
まったく、これだから弁護士志望は。

「お金だけに目がくらんだ訳じゃないわよ」

私は、智也の話を半分聞き流した。

「マジで?まだなんかあるの?」

そうよ。

お金じゃない理由がね。
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