私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
段ボールを運び込み、自分の部屋に荷物を置く。
新居では、布団くらい新調しようと思ってきた。
だから、普段使っていた布団は置いて来た。
荷物運びが終わったら、近くの量販店に買いに行こう。
そう思っていたけど、押し入れを開けたら、すでに新しい布団が用意してあった。
高陽さんが用意してくれたのだろうか?
一応、気を使ってくれたのかな。
忘れられてるわけじゃない。彼に気にかけてもらえたようで嬉しく思った。
部屋の改装も終わって、きれいになっている。
真新しい畳の匂いがする。
智也は私よりも先に、畳の上に、足を投げ出して座っていた。
「この部屋は、なに?客間?」部屋の中をぐるっと見渡してから言う。
「いいえ。私の部屋よ」
「ここ奈央の部屋なの?あんた、この部屋で一人なの?」
弟のくせに。姉に意地悪い視線を送ってくる。
「そっか。悪い……」
私の戸惑った顔を見て、茶化して悪かったと素直に謝って来た。
気の毒に思ったのか、智也はそれから、私に冗談めいたことは、何も言わなくなった。
「一人で良かったと思ってる。いきなり他人と一緒なんて。息が詰まるもの」
「いいのかよ、それで。本当に結婚すんのかよ」
「もう、結婚したのよ。後には引けないもの。
いっぺんにとはいかないけど。何とかなると思う」
智也は、心配してる。でも、こうやって少しずつ慣れていくのもいいと思ってる。
どんな夫婦になるのか分からないけれど。
そんなふうに思ってる私は、やっぱりおかしいのだろうか。
「何よ。そんな顔して。本当に夫婦なのか?って言いたいんでしょう?
あんたに言われなくても、分かってるから。
最初は、その方がいいだろうって。高陽さんが言ってくれて……」
言い訳がましく聞こえてしまったからなのか、弟の視線が同情的になる。
「わかったって。住んでた部屋、しばらくあのままにしておけよ。いつでも帰られように」
「うん」
私は、そんなに用心する必要があるのかなと思う。
でも、話してると智也の方が正しいと思えてくる。