私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

段ボールを運び込み、自分の部屋に荷物を置く。

新居では、布団くらい新調しようと思ってきた。

だから、普段使っていた布団は置いて来た。

荷物運びが終わったら、近くの量販店に買いに行こう。

そう思っていたけど、押し入れを開けたら、すでに新しい布団が用意してあった。

高陽さんが用意してくれたのだろうか?

一応、気を使ってくれたのかな。

忘れられてるわけじゃない。彼に気にかけてもらえたようで嬉しく思った。


部屋の改装も終わって、きれいになっている。

真新しい畳の匂いがする。

智也は私よりも先に、畳の上に、足を投げ出して座っていた。


「この部屋は、なに?客間?」部屋の中をぐるっと見渡してから言う。

「いいえ。私の部屋よ」

「ここ奈央の部屋なの?あんた、この部屋で一人なの?」

弟のくせに。姉に意地悪い視線を送ってくる。

「そっか。悪い……」

私の戸惑った顔を見て、茶化して悪かったと素直に謝って来た。

気の毒に思ったのか、智也はそれから、私に冗談めいたことは、何も言わなくなった。

「一人で良かったと思ってる。いきなり他人と一緒なんて。息が詰まるもの」

「いいのかよ、それで。本当に結婚すんのかよ」

「もう、結婚したのよ。後には引けないもの。
いっぺんにとはいかないけど。何とかなると思う」

智也は、心配してる。でも、こうやって少しずつ慣れていくのもいいと思ってる。
どんな夫婦になるのか分からないけれど。

そんなふうに思ってる私は、やっぱりおかしいのだろうか。

「何よ。そんな顔して。本当に夫婦なのか?って言いたいんでしょう?
あんたに言われなくても、分かってるから。
最初は、その方がいいだろうって。高陽さんが言ってくれて……」

言い訳がましく聞こえてしまったからなのか、弟の視線が同情的になる。

「わかったって。住んでた部屋、しばらくあのままにしておけよ。いつでも帰られように」

「うん」

私は、そんなに用心する必要があるのかなと思う。

でも、話してると智也の方が正しいと思えてくる。
< 48 / 173 >

この作品をシェア

pagetop