あの夏の空に掌をかざして
 場面は突然切り替わり、目の前にあの夢が広がった。


 うずくまったあたしを、苦しそうに見つめながら、意を決したように、唾を飲み込んだ、顔にモヤのかかった男の子。


 そして。


『っうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 グシャッ


 ドン!と、小さい頃のあたしを押し退け、その子は看板に潰された。


『……ぇ………×××、くん……?』


 突然目の前で起こった出来事に、幼いあたしは上手く理解できない様子で、混乱している。


 途端に淡い光が、男の子と、幼いあたしを包む。


 場面はまた移り変わり、あの闇にいた。
< 116 / 203 >

この作品をシェア

pagetop