あの夏の空に掌をかざして
 日向に先導されてこられた場所は、電気がついて、開けたところだった。さっきまで薄暗いところにいたので、眩しさが更に増す。


 腕で目を隠すようにしていると、日向がその上から手のひらを重ねてきた。


「…へ?」


「今だけ、我慢して」


 視界を完全に遮られ、耳元で日向に囁かれる。掠れた日向の声が、妙に艶っぽくて耳から何かに侵されていくようだった。


 目が見えないので、日向と体が密着して進路方向を誘導される。


 うわぁ~~っ!手が、日向の手が、あたしの肩に~~~っ!!


 日向の左手が、あたしの両目を覆い、右手であたしの右手を握っている。
フォークダンスのような体勢で、あたしは進まされた。


 数歩進んだところで、足を止める。右手を動かされている感覚がするが、日向が何をしたいのかが分からないから、あたしはどうすることも出来ない。完璧にマリオネット人形だ。


 そして、


「っっきゃ!」


 右手が、水が張ったところに入れられたかと思うと、底にいるふにゃっとした感触のナニかに触れた。

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