あの夏の空に掌をかざして
 楓との電話は、もう二時間をゆうに超していた。


「うん、それでね、有力な情報もなくて……もう行き詰まってるの」


『そっかー』


 楓だって、明日は学校で、準備とかたくさんあるはずなのに、こうして話を聞いてくれる。


 …優しいなぁ、こういうところ、ほんと日向に似てる。


 こんな話が出来ることが嬉しくて、口元が緩む。気持ちが楽になっていく気がする。楓の優しさをしみじみ感じて、あたしはすっかり泣き止んでいた。


『じゃあ、あたしも一緒に探してあげるから、また戻ったら、その時の私に事情を説明して!今日は暇だったし、行ってあげられるから!』


「え……いいの?」


 突然の楓の言葉に、一瞬言葉をなくした。それに楓は、もっちろん!と言って、あたしの欲しい言葉をくれる。


『あかりは今まで沢山くるしかったんでしょ?……あたしにも共有させてよ、……親友なんだから、さ』


 最後は照れたように小さくなっていったけど、あたしにはちゃんと聞こえた。


 じーんと、目頭が熱くなる。胸の奥があったかくなって、目の前が少しずつ滲んでいく。


「…ありがと、ありがとう」


 あたしは、精一杯の感謝の気持ちを伝えた。

< 90 / 203 >

この作品をシェア

pagetop