先生、僕を誘拐してください。


「急いで教えて。ランンニング中で抜けだして来たんだ」
「え、しかも部活中?」

そう言うと、焦った顔で頷く。良く見れば額から汗が滴り落ちている。

「えっと、後で蒼人か奏に聞いて」

「二人にばれたくないからこうやって二人の目を盗んでやってきたの。てか変な意味じゃないよ。俺、好きな人いるし」

下心からではないと言われて警戒は緩むモノの、ではなんで二人にばれたくないんだろう。

「分かった。電話番号でいい?」
「うん」

電話番号を言うと、手に持っていた携帯に登録し、そして焦れたような引きつった顔で私を見る。

「今日、電話してもいい?」

「え、あー、うん。でも奏たちは大体10時過ぎまで家にいるけど」
「部屋には入ってこないよね? 聞かれないようにできます?」

「……うん」

部屋の鍵は簡単に開くし、本音は窓辺に現れるけど。

それは言える雰囲気じゃなかったので、ただ頷いた。

「じゃあ戻るから、ほんと、内緒にしててくださいね」

念を押しつつも、自分の父親を押しやって慌てて帰って行く。
そんなに急いだら、あの坂を上がるのがきつくないだろうか。
< 101 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop