先生、僕を誘拐してください。
パートのおばさんたちは、優しいんだけど、なんていうか優しさに見返りを期待してる。
辛いってアピールする私に優しくしたいみたいな、あの事故の詳細を聞いてどうじょうしてあげたい、みたいな。
だから息が詰まる。
話さなくていいし、一人で段ボールの解体をしてる方が楽だった。
バイトできるのはここだけだから我慢するしかないのだけれど。
「お先に失礼致します」
タイムカードを差し込んでから、店長に挨拶するとさっきの渋い顔のままだった。
言われてみれば、豆粒みたいな丸い目とか似ているかもしれない。
小動物系、というのだろうか、村田くんはお調子者だけどちょっと可愛い顔をしている。
「さっきはすまない。あの馬鹿息子が」
「いえ。うちの弟がお世話になってるんで」
当たり障りなく言ったのに、店長の顔は晴れなかった。