先生、僕を誘拐してください。
「村田先輩が、最近ここら辺、変質者が出るとか言うから」
「へえ。あんたが家まで守ってくれるって言うの?」
「部活が終わったついでだろ。どうせ美空の家に行くんだから」
「……まあ、そうなんだけど」
「にやにやすんなよ」
だって、これは本音くんが現れなくても分かる。
村田くんがさっき帰ったばっかなのに、奏が部活を終えてここにいるはずない。
急いで着替えて此処にきてくれたのが分かって、なんだか心がこしょばゆい。
「なんかあんたの自転車、曲がってない?」
「あー、うん。この前、庭に放り投げたから」
「ちゃんと修理してないと危ないからね」
ちょっとハンドルがぐらぐらしているのを見て眉をしかめてしまった。
「迎えに来てやった俺に対してなんだ、それ」
「頼んでないし。それに私、もう誰も事故にあってほしくないから」
早口でそう言って自転車に乗る。
奏は私の後ろを黙ってついてきた。
「今日のご飯なに?」