先生、僕を誘拐してください。
わからない迷路の答えは、その迷路の壁を壊しながらまっすぐ進むこと。
直接聞くことなんだ。
「大変お時間を取らせてしまい申し訳ありません。父ともう少し話してみます」
ドアが開かれる音と、ペコペコと頭を下げながらとても腰の低い声だった。
「俺は専門学校でいいって」
「一!」
「あっ」
お姉さんが怒ると同時だったと思う。
私に気づいて朝倉くんが笑顔になるのは。
「どうしたの? 俺を待っててくれたの?」
「……その質問に答える前に私の質問に答えて」
綺麗なお姉さんは状況が呑み込めず、私と朝倉くんの顔を交互に見て焦っている。
ので私は微笑む。
「一年ほど前に父をバスの事故で亡くした者です」