先生、僕を誘拐してください。


奏は小さくこぼした後、立ち上がった。
「そのチケット渡したかっただけだから、部活戻る」
「練習は?」

「まだ夏休みにもなってねえのに気が早いっての」

「でも高校で最初で最後なんだよ。私と奏が合奏するの」

だから、頑張ろうね。

にこっと笑って見せたら、ちょっと唇を尖らせた。

そんな奏がかわいいと思う。





部活は結局、バイト前ぎりぎりまで待ったけど二年生が来なかったので私も帰った。

修学旅行説明会、受けなかったからどれぐらい時間かかるのか知らなかった私が悪い。

バイト先には村田くんも朝倉くんも来なくて、今日はうれしくてお惣菜の残りも貰ってしまった。
願はくは、この日常が永遠と続きますように。


家に帰ってお惣菜を温めていると、お父さんの遺影の前に豪華な花が飾っているのが見えた。

「これ、どうしたの?」
「ああ、奏くんのお父さんと選んだの。明日、先生がうちに来るでしょ? だから花を買いたいなって言ってたら奏くんがお父さんに聞いてくれたらしくて。今日、花屋に連れて行ってもらっちゃった」

「ふうん。奏のお父さん、今日仕事休みなんだ」
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