先生、僕を誘拐してください。



「真由も試合頑張ってね。応援には行けないんだけど」

夏休みにある県の陸上競技会。
事故があってからどうしてもいけなくなってしまったイベントの一つだ。

「いーの。いーの。蒼人にも生意気にも応援してるとか言われちゃったけど、私が優勝しないわけないでしょ?」

がはは、と笑いながら時間割をくしゅくしゅと丸めてカバンの奥に入れた。

「あんたとも大学生になっても仲良くしたいからさ。私の推薦入試とあんたが就職決まるまでは彼氏作るの止めといてよ」
「突然なにそれ。私はお金持ちと結婚するんだからそんな話、まだまだ先」

「そうかなあ」

ニヤニヤと真由が両肘ついて顎を乗せ私を見る。

「いつくっつくのか、奏くんの愛が報われる日が来るのか、私は楽しみよ」
「なんで奏よ。あいつは弟みたいなもんよ」

「向こうはそう思うたびに拗ねてるじゃん。最近めっちゃ格好良くなっていってるしさ。昼休みにお弁当渡されてるの見たよ」

「へえ。奏が」
うちのお母さんがお弁当作れなくなったから、私が作ろうかって聞いても断ってきたくせに。

学校でパンとかお弁当とか買ってたけど、私のお弁当は頑なに食べなかったくせに。
「モテるよ」

「私には関係ない」
< 136 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop