先生、僕を誘拐してください。


未来ちゃんたち二年生は、朝倉くんと舞台にたった。

朝倉くんが歌いながらピアノを弾き、未来ちゃんたちが合奏だ。

私と奏は、お互いの名前が書いたTシャツを着ながら、朝倉くんの歌声を聴いている。


「美空が俺を誘拐してくれていなかったら、こんなにゆっくり学際を楽しめなかったと思う」

「無理しないでね」

「絶対にしないよ」

繋いできた手。
手を繋ぐながら、ムーンライトセレナーデを聴きながら私たちはお互いの顔を見て微笑んだ。


奏に、お父さんの夢を見たと言ったら信じてくれた。
そして私が奏の本音を窓辺で見ていたことも。


「奏の前で、私の本音ってどんなのだったの? いっつも愚痴ってばっかで女々しかった?」
 奏の本音はいつも泣いていたとは言えないけど、自分の本音は聞いてみたい。


「ううん。いつも笑ってたよ。俺に笑っておじさんとの思い出を語ってた。現実ではだれにも言えないから、なのかな」


「ふうん」

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