先生、僕を誘拐してください。






一階に降りた私たちが、お母さんの書き置きを読みながらおやつをごそごそ戸棚から探していたら、蒼人が丁度帰ってきた。

「ウけるんだけど! 花壇に自転車刺さってるし。てか、奏、鞄と靴、学校に置いてるし」

リビングに入ってきた蒼人は爆笑しながら奏に鞄を投げつけ、尚も笑っている。
確かにそれは笑いたくなるかもしれないが、私達には数分前まで修羅場だったのだ。

「まあ、あれだな。去年生徒会長だった人がなんか言ってたから、何かあったって分かったけど」

「え、朝倉君に会ったの?」

スナック菓子を発見した私が、袋を持ったまま蒼人に駆け寄ると、それを奪いつつ頷く。

「うん。なんか、よく分からねえけど、申し訳なさそうな顔でごにょごにょ言ってたから『オッケー。任せろ』って言って宥めてきたよ」


蒼人がお馬鹿で少し救われた。いや、まあ朝倉くんは私を庇ってくれたのだから悪い人ではないのだけど、関わりたくないし弟にも関わってほしくない。

「あの人、父さんの葬式の時来たよな。覚えてる」
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