先生、僕を誘拐してください。


歴史小説が好きだった父は本棚に歴史系の本を沢山並べているが、そこに私の目線の本棚だけにはピアノの楽譜を並ばせてくれていた。

「ああ、あった」

見つけた楽譜は、ピアノ教室で先生がくれたファイルに入れてあったもの。
高校に入ったら、ピアノはエレクトーンやジャズなどジャンルなど様々増えて、どれを選んでもいいのよと言われて、ジャズの楽譜を貰っていた。

結局、一人で好き勝手弾くのが好きだったので、ジャズもしないしエレクトーンをやってみようとも思わなかった。レッスン代も違うし。

ジャズは自由な表現ができるから、私に合っているかもしれないね、と言ってくれたピアノの先生はどうされているだろか。

私が『ムーンライトセレナーデ』を弾いているの知ったら驚いてくれるのかな。

『……先生、僕を止めてくれる?』

ふわりとカーテンが舞う。

そんなはずないのに。
窓は閉まっていて防音にしているこの部屋のカーテンが、風の様にふわふわ舞うなんてあるはずないのに。

「止めるって何を?」

『僕は多分、真実に気付いてしまってる』

「真実?」
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