先生、僕を誘拐してください。


本当に夏になってしまったんだと、蝉が鳴く空を見上げる。

五日間のテストが終わると、静かだったグラウンドからまた部活生の声が聞こえてくる。
期末テストは、範囲も教科も多くて面倒くさい。
昔は、クラスで何番目とか平均点以上とか、目に見える評価を得るのは楽しかったんだけど、必要ないことだと分かると頑張る気力が沸かなかった。


『昨日はごめんなさい』

敦美先生に酷い言葉を投げつけようとした未遂事件だけど、次の日ちゃんと謝った。
奏や蒼人ではないが、真由に付添ってもらって。

『反省はしてないけど、敦美センセに八つ当たりするのは大人げなかった、です』

『あんた、それ謝ってないから』

真由は呆れた顔をしたけど、敦美センセは爆笑だった。

『大人げなかったって、お前、子どもだろうが』

『子供扱いしないでください』

ひねくれた言葉を返したけれど、敦美先生は目を細めて頷く。

『大人になるために、沢山悩んで沢山衝突して、で、沢山運動しよう。今しかできない自由があるんだ』
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