先生、僕を誘拐してください。
「第一音楽室の吹奏楽の方です。部長に学際で楽器借りれるか聞いてくれてます」
私の一つ下の学年の子は、真面目で楽器も美味くて頭の回転も速い子ばかりだったけど、流石だ。
用意周到だ。
「合唱部に奏くんも入るでしょ?」
「……今回は」
「来年は武田先輩が居ないから入らないとかナシだからね」
「うるせえ」
奏の反応に、未来ちゃんもからかいたくなったのか爆笑している。
「でも私が居なくなっても、奏には歌ってほしいな」
生ぬるかった風が、ようやく涼しくなっていく。
冷房の、掃除していないのかちょっとカビ臭い空気に、我慢できなくて窓を開けてしまう。
「カナリアは飛んで行っても、奏には居てほしい」
開け放たれた窓から、カナリアは飛び去った。
けれど、開けた窓から、逆に君には現れてほしいんだ。
「どこにも行かねえし。てか、美空もバイトがあるんだろ?」
「そうですね、さっさとパート決めちゃいましょ。でも奏くんが歌うなら私たちは楽器に専念しようかな」