先生、僕を誘拐してください。
奏に未来ちゃんが何か指示し、それを黙って聞いている奏では、きっともう色々吹っ切れたのだろう。
その間に、音楽準備室の鍵を開けて楽譜を取りに向かう。
一番古そうな楽譜を探して、二冊目で簡単に見つけ、二人の元へ戻ると、二人は動画を聴いていた。
「お、それは?」
「歌です。奏くんが英語の歌は難しいって言うから聴かせてみようかなって」
「へえ」
白黒の動画では、帽子をかぶったおじさんが低い声を艶っぽく掠れさせて歌っている。
著作権フリーなので、動画はあげやすくなったのか古い映像から新しい映像まで見たけれど、やはり男の人が歌っているのばかりだ。
「サックスとトランペットなら、今楽器取りに行った二人が専門なんでいけますよ。私、ドラムしますし」
「四重奏! 格好良いね。奏、いいよね?」
「まじかよ。英語オンリーなんて歌ったことねえ」
と言いつつも楽譜と動画を交互に見つつそれ以上は何も言わない。
やろうと思ってくれているらしい。
「英語なんてリスニングできる生徒はそうそういないって」