先生、僕を誘拐してください。
「武田先輩」
「うわ、聴き逃した。もう一回弾いて下さい」
サックスとトランペット、そして奥の楽器室の鍵を持った奏は一番最後によたよた現れたけれど、他の三人はピアノの前に群がった。
「学際楽しみですね」
「ここ、露店は先生や保護者がするから私たちは自由に出し物できますもんね」
「奏くーん、此処来て歌ってよ」
皆に促され、迷惑な顔をしつつも私の横になった。
「あ、冷房入ってるのに窓開いてる。閉めておきますね」
二人がバタバタと走り、窓を閉める。
窓を閉めたら、本音君は逃げられないかな。
隠れて本音を聞くよりも、君の口から聞きたいよ。
横に立つ奏を見上げて、私も本音を言えない癖にそう思ってしまった。