『誰にも言うなよ?』
パンクの修理が終わると、自転車屋から出てまたわたしの隣を当たり前のように歩く雅人。
ここまで付き合ってくれることないのに。
フリをするなら、とことんした方がいいってことなのだろうか。
「学校行事におばあちゃん来てたってのホント?」
「え……」
「答えたくないならスルーしていいよ」
……大丈夫。
この人は、わたしをからかったりしない。
「うん。小さい頃に、事故で……両親が亡くなって。それからは祖父母と暮らしてる」
「それでか」
「……なにが?」
「素子がしっかりしてるの」
「わたし、しっかりしてるかな?」
「素子の手料理、もっと食ってみたい。玉子焼き以外も」
「……!」
「また明日」
「うん。また、明日……」
雅人と話していると、あっという間に家についてしまう。
「素子」
「ん?」
雅人を見上げると、なにか言いたげな様子に見える。
なんだろ。
「俺のこと、もっと頼っていいよ」
「頼る……って?」
「男手が必要なときとか」
「……あ、ありがとう」
「それから」
「?」
「俺、イヤイヤしてるわけじゃないから」
(……なんの話?)
「俺のこと。彼氏って思って」
――!?
「それじゃ」
帰っていく雅人の背中を見つめて考えた。
今の……って。
『彼氏って思って』
……って。
ど、どういう意味……?