『誰にも言うなよ?』
「そうじゃなくて……先生は、気づいてるし」
「え?」
「わたし達が、本当は付き合ってないこと。知ってるみたいだった」
「……そうかよ」
あのね、雅人。
わたし、雅人に優しくされることが
なんだかすごく申し訳ない。
雅人は迷惑じゃないの?
朝、家まで来るのしんどいよね……?
それから、
学校に着くまでお互い無言だった。
雅人と気まずくなったのは初めてだ。
「……っ!」
靴箱で、エリカと鉢合わせになった。
最悪だ。
今、一番顔を合わせたくないやつ……。
昨日の記憶が、フラッシュバックする。
知らない男に車に連れ込まれ、目隠しをされた記憶が――。
「やるじゃん」
(……え?)
エリカの口から出た言葉は、賞賛だった。
「レオを仲間にするなんてさ」
(……レオ、って?)
「銀髪の男だ」
隣から雅人が補足してくれる。
「『男二人組が助けにきて逃げられた』って聞いた。でも、それってほんとはレオが逃がしてあげたんじゃないの?」
あの銀髪が、わたしを、逃がした――?
「……金曜日のこと。エリカの仕業なの?」
エリカはなにも応えない。