『誰にも言うなよ?』
それから、わたしは渋々レオとビルから離れた。
結局わたしにできることなんて、ひとつもない。
「……無力だなぁ」
「仕方ないよ。モトコは凡人なんだから。っていうか凡人以下なんだし」
「うるさいよ金持ち」
「ボクと一緒になったらセレブになれるけどね?」
一緒になるとかっ……。
「想像した? どこまでした?」
「してない!!」
……アイツ、大丈夫かな。
「カミヤが心配かい?」
「……うん」
「平気でしょ」
「そうかな?」
怪我とかしなきゃいいけど。
騒ぎに巻き込まれて逮捕なんてされないよね?
「モトコさぁ。アイツの実力みくびってない?」
……狼谷先生の実力?
「そりゃあ、いくら喧嘩が強くても相手が相手だと危険なのかなって」
あんなお店を経営してるってラスボス感ハンパないし。
「……かつてカミヤが入ってた族ってさ。関東一なんだよね」
かっ……
関東イチ……!?
「その総長なんてしてたんだ。アイツには怖いものなんてないんだよきっと」
(そ……)
「ちょっと見てみたかったなぁ」
「いま、なんて?」
「え? ちょっと見たかった……」
「その前」
「……ボクなにかいった?」
「そ、」
「?」
「ソウ……」
「ああ。総長?」
ねえ。待ってよ。
「アイツ、総長してたの……!?」