『誰にも言うなよ?』


「さ、行こう」


レストランを出て向かった先は――。


(ここは……?)


ひとけのない通りだった。


依頼主の旦那さんと教え子の女性は、とある建物の中に消えていった。


……恋人が泊まるようなホテルだ。


「信じられない」

「まったく。まだ明るいぜ?」

「っ、問題はそこじゃなくて……」

「決定的証拠ゲットだ」


一部始終をレンズにおさめる先生。


「今のが……」

「これ以上の証拠はないさ」


先生は、この展開を予想していたんだ。


だからわたしを事務所に先に帰そうとした。


「戻ろうか」

「……はい」


最初から、想像つくことじゃないか。


これはあくまで仕事で。

遊園地デートを楽しみに来たわけじゃないことくらい……。


不倫の調査なんて

見たくないものを見てしまうって。


なのに、こんなに落ち込んでしまう――。

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