『誰にも言うなよ?』


「っ、」


見られた……よね?


慌てて背けたけど。


赤くなっていた顔を、きっと見られた。


「可愛いねぇ。お前は」

「……は?」

「こんなことで照れて」


笑って本を拾い上げる、先生。


(意識してるのは……私だけ、かな)


さらっと流されて終わる。


わたしが、子供だから。


(そうだ……)


「先生」

「なんだ?」

「この前、ここにきたとき。写真を撮られていたみたいで」


先生から、笑顔が消える。


「たぶん、あの窓から」


事務所の窓の向こう側には、別のビルやマンションが見える。


「その写真を拡散されました」

「…………」

「少し騒ぎになったんです。会長に注意されたり。でも、もう誤解……みたいなのも解けたので特別報告する必要もないかなって思って話すか迷ったんですが」

「言えよ」

「……え?」

「真っ先に話せよ。そういうことは」

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