『誰にも言うなよ?』
「会長って見た目は天使なのにあんなに腹黒かったんですね。幻滅しました」
「お前のそういう態度が余計に佐々木を挑発してるんだろうってことが手に取るようにわかるよ」
先生は、わたしの態度にも問題があるって思ってるのかな。
「もっと大人になれって言ってます?」
「いいや」
(……違うの?)
「そのあとは?」
「え……」
「鍵は、すんなり開けてもらえたのか?」
思い出したくない記憶を遡るのは
ただただ苦痛でしかない。
「いえ。自分で……開けました」
「鍵を奪ったのか? 佐々木から」
「はい」
「相手は男だ。よく奪えたな」
「すきをついて……会長が油断してるときに奪いました」
とにかく逃げなきゃ、と。
必死だった。
「どこから」
なんでそんなこと、聞くんだろう。
「制服の内ポケットから」
どうして素直に答えてしまうんだろう。
「キスでもされた?」
――!?
「なんで……それ、」
「図星か」