好きだから……
「誘導尋問……なんてしてませんよ、俺は。うっかり口を滑らしそうになった河原先生がいけないんでしょ?」
「……ったく。どいつも、こいつも」と先生が呟いて、さくさくとテントの中に入っていった。

 絢ちゃんがにこっと笑って、わたしの隣に立つと、「良かったね! ほぼ確定」と嬉しそうな表情になった。

「え? なにが?」とわたしは、絢ちゃんに聞き返す。
「京ちゃん、告白したも同然だったじゃん! ちぃちゃん、望みがないって話してたけど、望がありまくりだよ、今の京ちゃんの態度!」
 そう、なのかな。期待していいのかな?

 東山先生が好みのタイプではない、という話は聞けたけど。
 実際の好みのタイプは聞けなかったし。

 いいタイミングで目はあったけど、たまたまかもしれない。

「このことは、ここだけの秘密ね」とみどりさんもにこっと笑ってくれた。






「先生、送っていただき、ありがとうございました」
 わたしは、先生の車の助手席でぺこりと頭をさげた。

 先生の車の後部座席には、今日使ったテントやテーブルなどがどさっと無造作に置いてあった。

「千里、ひとつ……いいか?」と、ハンドルを握ったままの先生が、ちらっとわたしを見やった。

「はい?」とわたしは、小首を傾げた。

「住所、ちがくね?」
「えっ!?」
……しまった。とわたしは胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
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