好きだから……
 学校に報告してある住所と、今現在、わたしが住んでいる場所が違うんだった。
 すっかり疲れていて、そこまで頭が働かなかった。

 先生に送ってもらえるといううれしさも混じって、舞い上がってもいたし。

 ど、どうしよう……。どう言い訳すれば、おかしない? つじつまのあう理由になるだろう。

 先生が少し前かがみになり、助手席の窓から見えるアパートをじっと見つめる。

「あ……っと、これはぁ」としどろもどろに言葉を濁し、わたしは間を繋ごうとする。

「正直に言え。嘘はいらない」と先生がまっすぐにわたしを見つめてきた。

「嘘……ダメ、ですかぁ?」
「当たり前だろっ! ……『ダメ?』とか言いやがって」

 先生が「はあ」と深く息を吐き出すと、ハンドルに額をつけた。

「で? なんで住所が違うんだよ」
「母が再婚したんです。それで、一人暮らしを始めました」
「千里、一人暮らししてんのか?」
「あ、はい。学校に報告するってなると、いろいろと面倒だし。表面上は、母と再婚した義父と一緒に暮らしているってことにしてますが……すみません」
 わたしは、肩を小さくして身を縮めた。

 担任の先生を前にして、手続きが面倒だから、嘘をついていた……と言ってしまった。

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