好きだから……
「立ち直れな~い。担任に見放されたから~。もうこの先の高校生活に光がみえませ~ん」
「仕方ねえあ。絢音には、俺様の引き出しにあるお菓子をやるよ」
「え? ほんとに!? 京ちゃんのあの高いチョコを食べていいの?」
「……ほらな、もう立ち直ってやがる。絢音はちょろいちょろい」

 京ちゃんが、「あはは」と大きな声で笑いだす。

 え? これは……京ちゃんにからかわれたの、かな?

「河原先生、あまり関心しませんわね。教師として、生徒には一線を引いた態度で接しなくては」
 赤いスーツが似合う2-Aの担任である東山 美紅先生がにっこりと嘘っぽい笑顔で笑いかけてきた。

 圭ちゃんたち「T3」の担任だ。
 色気があって、大人の女性代表のような美紅先生。

「あ、東山先生。今夜、どうです? 一杯?」と京ちゃんが、堂々とデートのお誘いをする。

「遠慮しておきますわ。教師として尊敬できない方とお話しする時間はありませんの」
 ほほ、と美紅先生が笑い声をあげて、通り過ぎていく。

「これまた、堂々と拒否の姿勢。京ちゃん、振られたな」
 カナちゃんが、ニヤッと笑った。

「絢音、さっきのチョコはナシだ」
「え!? 高級チョコ……」

「あ~あ、カッコ悪っ。東山に振られたからって、絢音に八つ当たりしてら~」とカナちゃん。

「絢ちゃん、料理クラブでチョコマフィン作るから。一緒に、作って食べよ?」とちぃちゃんが誘ってくれた。

「え? いいの? 行く食べるっ!!」
「その食欲と立ち直りの速さだけが取り柄だな、お前は、さ。勉強できなくても、図太く生きていけるだろうよ」
 フッと京ちゃんが、笑った。

「それって……勉強は諦めろって言われてるような」
「『ような』じゃねえよ。諦めて、明るく生きろって言ってんだよ。……あ、千里、俺にもチョコマフィンな~」
「先生にはあげない~。絢ちゃんに意地悪したからぁ」
「はあ!?」と京ちゃんが、不満な声をあげてあたしたちは笑いあった。

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