溺愛CEOといきなり新婚生活!?
五つもあるエレベーターのうち、途中階を通過すると表示のある一つの前で、到着を待つ。
「聞いているかもしれませんが、生活拠点は最上階の六十階の部屋です」
「最上階!?」
「ええ、どうせなら、いいところで生活したいでしょ?」
到着を知らせる音が控えめに鳴り、上階行きの方向灯が点滅している。
「それから、さっきお渡しした鍵をここにかざさないと、最上階行きのエレベーターは動かない仕組みになっているので、覚えてくださいね」
万全なセキュリティの箱の中、たった数分だけ言葉を交わした男性とふたりきり。
本来なら緊張してしまうか警戒するはずなのに、どういうわけか永井さんは私の心の壁を難なく通過してきたような気がする。
まるで透明人間のように、するりと。
ゆっくりと開いたエレベーターから、永井さんは私を先に降ろしてくれた。
「この通路を右にまっすぐ行って、突き当たりにあるドアから出入りしてください」
「はい……」
彼は当たり前のように話すけれど、私にとっては見るものすべてが豪華すぎて言葉にならない。
大理石と分かる共用廊下も、等間隔にある壁のくぼみに飾られている花でさえ、私の知らないもののように見えるのだ。