溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「今日は正面でいい」

 付き合ってから、何度も九条に頼んで車を出してもらうたび、あまり人目につかないようにしてきた。
 ATSの近隣だったり、少し離れた裏手の道だったり……なんだか少し懐かしいな。

 未だ煌々といくつかの部屋が明かりを灯すATSの本社ビルを見上げる。


「……社長、大丈夫ですか? すでに数人の社員の方が、足を止めていらっしゃるようですが」
「構わないよ」

 花澄が俺との交際を隠してきたのを知っている。
 俺がこういう立場だから、気を使ってくれていたことも分かってる。


「私の方が緊張してきました」
「なんで九条が」

 男二人で並んで立ち、小さく笑っていると通りかかる女性の視線が刺さる。
 やっぱり裏手で待っていた方がよかったかと思うけれど、そういうわけにいかない。

 今夜は堂々としていたい。


< 377 / 378 >

この作品をシェア

pagetop