溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「今日は正面でいい」
付き合ってから、何度も九条に頼んで車を出してもらうたび、あまり人目につかないようにしてきた。
ATSの近隣だったり、少し離れた裏手の道だったり……なんだか少し懐かしいな。
未だ煌々といくつかの部屋が明かりを灯すATSの本社ビルを見上げる。
「……社長、大丈夫ですか? すでに数人の社員の方が、足を止めていらっしゃるようですが」
「構わないよ」
花澄が俺との交際を隠してきたのを知っている。
俺がこういう立場だから、気を使ってくれていたことも分かってる。
「私の方が緊張してきました」
「なんで九条が」
男二人で並んで立ち、小さく笑っていると通りかかる女性の視線が刺さる。
やっぱり裏手で待っていた方がよかったかと思うけれど、そういうわけにいかない。
今夜は堂々としていたい。