寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
薄い頭髪に無精ひげ。カヤはどこにでもいそうな冴えない中年男だった。商売人とは思えないほどに無口で無愛想だ。
やたらと口うるさい男よりはいい主人かもしれない、リディアはそう前向きに考えることにして、カヤに促されるままに歩きだす。
買い手の決まったほかの奴隷たちもゾロゾロと移動し始めていて、その光景は家畜の群れそのものだった。
「……ディア、リディア」
ふいに群れの中から小さく自分を呼ぶ声がした。リディアはカヤに見とがめられないようにさりげなく、声の主を振り返る。
「イザベラ!」
リディアのすぐ真うしろをイザベラが歩いていた。彼女はどこへ行くことになったのだろう。リディアの心の声を見透かしたようにイザベラは話しだす。
「私は帝都に行くことになったわ。ハルーンの商人に買われたの」
「そうなのね。……私はこの街の娼館。けど、近いうちに帝都に行くつもりよ!また会えたらいいね!」
リディアの言葉を聞いたイザベラはにこりと茶目っ気たっぷりに笑うと、軽やかに手を振った。
「そうね。帝都の皇宮で再会できたらいいわね。またね、リディア」
(イザベラってば、絶対に無理だと思ってるわね! ……やっぱり、皇帝陛下の寵姫になってやろうなんて無謀なのかしら? 私は一生を娼婦として過ごすことになるのかしら……)
根っから楽観的なリディアにしては珍しく、弱気な考えが頭をよぎる。リディアはそれを振りきるようにひたすら足を前に進めた。賑やかなハクゥの街はリディアの寂しさを余計に際立たせる。
(父さん、母さん、マイア、リンネ……。みんな、今どうしているんだろう? ナキにもらったお金でこの冬を越せるだけの小麦を買うことはできたかしら?)
やたらと口うるさい男よりはいい主人かもしれない、リディアはそう前向きに考えることにして、カヤに促されるままに歩きだす。
買い手の決まったほかの奴隷たちもゾロゾロと移動し始めていて、その光景は家畜の群れそのものだった。
「……ディア、リディア」
ふいに群れの中から小さく自分を呼ぶ声がした。リディアはカヤに見とがめられないようにさりげなく、声の主を振り返る。
「イザベラ!」
リディアのすぐ真うしろをイザベラが歩いていた。彼女はどこへ行くことになったのだろう。リディアの心の声を見透かしたようにイザベラは話しだす。
「私は帝都に行くことになったわ。ハルーンの商人に買われたの」
「そうなのね。……私はこの街の娼館。けど、近いうちに帝都に行くつもりよ!また会えたらいいね!」
リディアの言葉を聞いたイザベラはにこりと茶目っ気たっぷりに笑うと、軽やかに手を振った。
「そうね。帝都の皇宮で再会できたらいいわね。またね、リディア」
(イザベラってば、絶対に無理だと思ってるわね! ……やっぱり、皇帝陛下の寵姫になってやろうなんて無謀なのかしら? 私は一生を娼婦として過ごすことになるのかしら……)
根っから楽観的なリディアにしては珍しく、弱気な考えが頭をよぎる。リディアはそれを振りきるようにひたすら足を前に進めた。賑やかなハクゥの街はリディアの寂しさを余計に際立たせる。
(父さん、母さん、マイア、リンネ……。みんな、今どうしているんだろう? ナキにもらったお金でこの冬を越せるだけの小麦を買うことはできたかしら?)