寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
村を出てから必死に思い出すまいとしていた家族の顔が、浮かんでは消えていく。
(ダメ、ダメ。弱気になるな。これからは、ひとりでもしっかり生き抜いていかなきゃならないんだから)

ほどなくしてたどり着いたカヤの娼館は、リディアの想像以上に豪華なものだった。至るところにきらびやかな美術品が飾られ、まるで物語に出てくる貴族のお屋敷のようだ。
それは年頃の少女を喜ばせるには十分なもので、リディアもすっかり気分が高揚していた。
が、カヤに促されて一歩裏側、つまりは従業員用の居住空間に足を踏み入れてみれば……実家と変わらないオンボロの炊事場と粗末な部屋が連なるばかり。

(さ、詐欺だ〜)
夢を売る商売の現実を突きつけられたリディアは、がっくりとうなだれた。
(まぁ、あたり前よね。奴隷がいきなりお姫様みたいな暮らしができるわけないか。風雨をしのげる部屋があるだけマシね……)

「ザンナ、新入りだ」
カヤは炊事場で作業をしていた大柄な女に声をかけると、自分はスタスタと奥の部屋へと入っていってしまう。
ザンナと呼ばれた女は背が高く、でっぷりと肥えていて、目鼻立ちのくっきりした顔に派手な化粧を施していた。若い頃は美女だったのかもしれない。
若草色のワンピースも胸もとで輝く宝石もそこそこに値が張りそうに見える。おそらくこの女がカヤの奥方、この娼館の女将なのだろう。

ザンナはリディアをひと睨みすると、きつい口調で言った。
「名前は?」
「リディアです」
「ふん。顔は悪くないけど、色気がないねぇ。そんなんじゃ、うちじゃ売り物にならないよ」

(そう言われても、私が買ってくれって頼んだわけでもないし……)
「すみません……」
心の中では口答えをしてみるものの、現実にはザンナの迫力に圧倒されるばかりだ。
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