寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
「仕事って……こんな田舎で女ができる仕事は父親の手伝いか夫の手伝いのどちらかだよ。街に出れば違うのかもしれないけどなぁ」
この村で言うところの〝街〟とは、王都のラバンのことだ。この村でラバンに行く機会がある人間など領主くらいのもので、リディアたち庶民は一生足を踏み入れることもない。

つまり、リディアが仕事を見つけることなど不可能。父親はそう言いたいのだ。
「でもっ」
リディアはなおも反論しようとしたが、父親は笑ってそれ以上は取り合わなかった。
「ははっ。わかったよ、リディア。お前はまだ十七歳だ。結婚相手を探すのはもう何年かしてからにしよう。村のみんなには俺からそう説明しておくさ」
「そうね。あと数年もすれば、きっと結婚したくなると思うわ」
両親はリディアが結婚を拒むのは若さゆえと思い込んでいるようだ。

(そういうことじゃないのにな……)
気持ちが伝わらないもどかしさを感じつつも、無理やり結婚しろとは言わない両親の優しさにリディアもそれ以上はなにも言えなかった。
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