カノジョの彼の、冷めたキス




エレベーターを降りて外に出ると、すぐにあたしに気がついた高下さんが笑いながら手を振ってきた。


「斉木さん、こっち」

「すみません、お待たせして」

「いいよ、全然。俺も誘っといて結局遅くなってしまってごめんな。どうしよ?どっかおすすめの店とか調べてくれてる?」

「え、っと……」

今にもその場から離れて歩き出しそうな高下さんに、あたしは曖昧な言葉を返す。

本当だったら、あたしが大学時代の友達とよく行くお店に歩いて行く予定だった。


でも……

そっと今でてきたオフィスの入り口を振り返る。

渡瀬くんとのことを中途半端にしたまま、高下さんと飲みにはいけない。


「どうしたん?」

動き出そうとしないあたしを不審に思ったのか、高下さんがそう訊ねながら横から顔を覗き混んできた。


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