カノジョの彼の、冷めたキス
目が合うとにこりと微笑んでくれる高下さんは、優しいし気が効くしとてもいい人だと思う。
だけど……
「高下さん、ごめんなさい。あたし……」
頭をさげて高下さんに謝ろうとしたとき、不意に背後から人の気配がして肩をつかまれた。
そのままグッと後ろに引っ張られて、頭をさげたまま蹌踉めく。
そのあと、背中にあたった何かがよろけたあたしの身体を支えてくれた。
何が起きたのかわからず目を見開くあたしの前で、高下さんも同じように目を見開いている。
振り返ろうと頭をあげたら、背中からよく見知った声がした。
「すみません、高下さん。悪いですけど、こいつはもう前から俺が先約済みなんで」
「え?」
戸惑い気味に見上げると、渡瀬くんがなんだか挑戦的な目で高下さんのことを睨みながらあたしの右手をぎゅっと握った。