カノジョの彼の、冷めたキス
動揺を隠しきれないまま渡瀬くんを見上げる。
すると彼が繋いだ手をさらに強く握ったから、体温が上昇して熱でも出たみたいに全身が熱くなった。
「いや、大阪に来てくれたときからもしかしたらそうなんかなーとは思っててんけど。付き合ってたなら言ってくれたらよかったのに」
「仕事で行った場所で交際宣言するバカいませんよね?」
「そう言われたらそうやな」
高下さんに答える渡瀬くんの声は、相変わらず交戦的で冷たい。
だけど高下さんはそんな彼の態度など気にもとめていない様子で、変わらず声をあげて笑っていた。
「高下さん、展示会のあとの飲み会のときもやたらと斉木さんに絡んでましたよね?」
「あー、そう。話しやすいし可愛い子やなーと思って。けど、彼氏がいる子にしつこくちょっかいはかけへんから安心して」
高下さんは笑いながらそう言うと、あたしにも小さく目配せをした。