カノジョの彼の、冷めたキス


渡瀬くんには営業部のフロアで待ってもらってたはずなのに、どうして……

それに、先約って何の話……?

未だ挑戦的な姿勢を崩さない渡瀬くんのそばでおろおろしていたら、しばらく驚いたように目を見開いていた高下さんが突然声をあげて笑い始めた。


「はは、何それ。やっぱり、斉木さんと渡瀬くんて付き合ってたん?」

「まぁ、そんな感じです」

大声で爆笑する高下さんを、渡瀬くんが不機嫌そうな目で見つめる。

だけどあたしは、そんなふたりの間でただ口をパクパクと動かすことしかできなかった。


そんな感じ、って何……?

渡瀬くん、高下さんに対してあたしと付き合ってるって公言したの……?

それってどういう……

いろいろな妄想が脳内を駆け巡って、心臓が今までにないくらいバクバクと激しく音をたてて鳴る。


< 129 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop