カノジョの彼の、冷めたキス
あたしは茫然としている渡瀬くんを強く押し退けて起き上がると、そばに落ちていた着替えを手繰り寄せて胸の前で抱きしめた。
「着替えなら、ひとりでできるから大丈夫」
はだけた胸を着替えの服で隠して、ソファーから立ち上がる。
「あぁ、うん……」
戸惑ったように言葉を返す渡瀬くんは、突然態度を変えたあたしの気持ちなど少しもわかっていないらしい。
当たり前だけど、それが少し悔しかった。
「そのペアカップ、おしゃれで素敵だね」
だからつい、皮肉っぽくそう言った。
「え?カップ……?」
きょとんとした顔で、渡瀬くんがテーブルの上のペアカップに視線を向ける。
そしてしばらく眺めてから言った。
「確かに、結構いいデザインだし気に入ってるかな」
気に入ってるんだ……
渡瀬くんが何気なく口にしたのであろうその言葉の破壊力は絶大だった。