カノジョの彼の、冷めたキス
「あの、渡瀬くん。周りに人がたくさんいるし……」
周りの目を気にして視線を泳がせていたら、あたしにきゅっと身を寄せた渡瀬くんが耳元でささやいた。
「みんな花火に夢中で周りが何してるかなんて見てないよ」
「でも……」
「前向きな。ちゃんと見とかないと、花火終わるよ?」
渡瀬くんが、指であたしの両頬をおさえるようにつかんで強制的に前を向かせる。
その瞬間、ドンと大きな音がして、夜空に散る色とりどりの花火が見えた。
次々と休むことなく打ち上げられる花火をぼんやり視界にとらえながら、あたしの意識は背中の渡瀬くんばかりに気を取られていた。
たいてい花火大会に行ったときはスマホで花火の写真を撮ったりするのに、今回はそれすら忘れてしまった。
15分間の花火はとても綺麗だったけどあっという間で、全体的に記憶がとても朧げだ。
背中に感じる渡瀬くんの鼓動に、ただずっとドキドキとしていた。