カノジョの彼の、冷めたキス
「うん、平気」
内心ドキドキしながらも、平静を装ってそう答える。
渡瀬くんはそんなあたしの肩を引き寄せると、彼の横から前へと移動させた。
あたしが動いて空いた少しのスペースは、すぐに後ろから詰めてきた人で埋まってしまって、もうそこには戻れなくなる。
困って後ろを振り向こうとすると、渡瀬くんがニヤリと笑って、後ろから腕を回してきた。
ぎゅっと引き寄せられて、あたしの背中が渡瀬くんの胸にぴたりとくっつく。
「わ、渡瀬くん……?」
「ん?」
「あたしが立ってた場所、なくなっちゃったけど」
「うん」
渡瀬くんにだけ聞こえるように訴えかけたけど、曖昧に交わされる。