カノジョの彼の、冷めたキス


社員旅行から帰ってきた日の夕方から、私はそのまま渡瀬くんの家に泊まりにきてしまっていた。

今日は月曜日で普通の勤務日。

仕事の前日は、遅刻したり勤務に差し支えたりしたらいけないから滅多に泊まりに来ないのだけど。

土日にあんまり一緒にいられなかったから……と渡瀬くんに誘われたのと。

旅行先での皆藤さんとのエレベーターの一件があったことで、私も別々に帰るのが淋しかったのだ。


「早く食べないと遅れるよ」

顔を洗いに行く渡瀬くんを少し急かして、朝食を用意したテーブルにつく。

先にコーヒーを飲んでいたら、着替えを済ませて出勤モードになった渡瀬くんもやってきた。

ふたりで一緒に朝ごはんを食べて、出かける準備をする。

一緒に家を出て、一緒に電車に乗るのは新鮮で嬉しかった。


「会社に入るタイミングはちょっとずらす?」

会社の最寄り駅に着いたときにそう訊ねたら、渡瀬くんが小さく首を傾げた。



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