カノジョの彼の、冷めたキス
◇
「斉木さん。今月俺らが仕切る営業会議の資料なんだけど……渡瀬くんから今月分の売り上げ報告をまだもらってないんだよね」
原田先輩から声をかけられて、キーボードを叩いていた手を止めて顔を上げる。
「17時までに部長に会議資料出したいんだけど、今から取引先に行かないといけなくて。今ちょうど渡瀬くんも出てていないし、戻ってきたら代わりに確認してデータ入力しといてもらっていいかな?」
「いいですよ。確認しときます」
原田先輩に頷きながら、この頃忙しそうな渡瀬くんと会社で話をするきっかけができて内心嬉しく思う。
社内のボードに書かれてある渡瀬くんの予定を確認したら、原田先輩が出かけてから30分後に帰社することになっていた。
「じゃぁ、頼むね」
「わかりました。渡瀬くんから確認したデータを入れたら資料は完成ですよね?ついでにあたしが部長に資料提出しておきます」
「ありがとう。助かる」
カバンを持って立ち上がると、原田先輩が時間を気にしながら出て行った。