カノジョの彼の、冷めたキス


「あ、うん。そうか……」

渡瀬くん、ごはんは食べたのかな。

冷蔵庫に何かあるっけ。

油断してて、部屋あんまり片付いてないよ。


「ていうか、もうあと数分で穂花んち着く」

「えっ⁉︎」

「何だよ。今俺が行ったらまずい状況ってこと?」

思わず驚きの声をあげると、渡瀬くんがやや不満げに訊ねてくる。


「そうじゃないけど……あたし、お風呂あがったばかりだし、部屋散らかってるし……」

「そんなのいいよ。今会いたいし」

電話越しに届いた渡瀬くんの声に、胸がぎゅっとなる。

そんなこと言われたら、迎えいれないわけにいかないじゃない。

スマホを耳に当てたまま、帰ってきたから放ったらかしだった洗濯物だけでもざっとひとまとめにして片付ける。


「着いた」

渡瀬くんがそう言って電話を切る。

次の瞬間に、部屋のインターホンが鳴った。



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