カノジョの彼の、冷めたキス
「さぁ、そのへんはよくわかんないけど。副社長の仕事を手伝うにあたって、秘書の皆藤から仕事関係の連絡を受けることが増えると思う」
「そっか。そうだよね。副社長も忙しいし、必然的にそうなるよね」
極力明るい声で会話を続けるように心がけてみたけれど、あたしの声の震えはたぶん渡瀬くんに気付かれていると思う。
顔を上げられずにいるあたしの頭を、渡瀬くんがぎゅっと引き寄せた。
「いろいろ誤解されたくないからちゃんと言っとく。誰と何の仕事をしてても、俺が第一優先だって思ってるのは穂花だから」
渡瀬くんの言葉に、胸がドクンと鳴る。
「これまでどうだったかとか、前に何があったのかとか、そういうのに惑わされるような感情は残ってない。穂花しかないから。それだけ、ちゃんとわかっといて」
話しながら、渡瀬くんがあたしを抱く腕に力を込める。
もしかして渡瀬くんは、わざわざこのことを伝えるためにうちに寄ってくれたのかな。
あたしがあとからこのことを知って、不安になったりしないように。
そう気付いたら、それまで胸の中にあった不安な気持ちが徐々に和らいでいった。