カノジョの彼の、冷めたキス





部署の3分の2くらいの同僚が帰宅して、昼間よりも静かになった社内でため息を吐く。

きっちり1時間の昼休みをとって戻ってきた渡瀬くんは、夕方にまた打ち合わせがあるのかどこかへ消えてしまった。


個人的な感情は封印しなくてはと思うのに、ふたりでランチに行った渡瀬くんと皆藤さんのことが気になって、午後からはあまり仕事がはかどらなかった。

仕方なく1時間ほど残って仕事を片付けているけれど、さっきから数分おきにため息ばかりこぼしてしまっている。

どうせ残っても仕事がはかどらないなら、今日は帰って明日に気持ちを切り替えたほうがいいのかも。

何度目かのため息でそのことに気が付いて、デスク脇のカバンを取り上げる。

スマホを取り出してみたら、20分ほど前に渡瀬くんからのメッセージが届いていた。


渡瀬くんからのメッセージは、仕事が終わったらこのビルの共同スペースとなっている休憩所で待っているという内容。

それを見た瞬間、途端に元気が出た。



< 207 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop