カノジョの彼の、冷めたキス



「孝哉、と、これからも一緒にいさせてください」

改まったキスのあと、渡瀬くんにそう告げて小さくお辞儀する。


これから新しい毎日が始まるから……

気付かれないと思うけど、今まで呼ばなかった渡瀬くんの名前を呼んでみた。

初めて呼ぶ名前の響きがくすぐったるくてドキドキする。


「穂花」

渡瀬くんに呼ばれて顔をあげたら、唇を奪われると同時に勢いのままにソファーに押し倒された。

渡瀬くんの熱い舌が、あたしのそれに情熱的に絡みつく。

呼吸をするのも忘れるくらいのキスに、息が乱れた。


「ずっとここにいて」

キスの合間に、渡瀬くんがささやく。

その低くて甘い声の響きに、胸の奥がきゅっと音が鳴るくらいに締め付けられた。


「孝、哉……」

愛おしい名前を呼ぶ声が、少し掠れる。

折り重なる彼の頬に手を伸ばして触れたら、そこも、指の先にあたった彼の耳も、見た目以上にずっと熱かった。






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